横浜家庭裁判所小田原支部 昭和40年(少)1358号 決定 1965年12月23日
少年 N・S(昭二二・二・一五生)
主文
少年を昭和四〇年一二月二三日より昭和四二年六月二二日までの間中等少年院に戻して収容する。昭和四〇年少第一一六五号傷害および同第一三五八号窃盗各保護事件について少年を保護処分に付さない。
理由
本件申請の理由は別紙のとおりであり、本件記録によれば右各事実を認めることができる。よつて昭和四〇年六月二四日当裁判所において一応試験観察処分に付し在宅更生にその期待をもつたのであるが、その後上記傷害、窃盗の各非行を累行するにいたり、在宅処遇もその限界に到つたものと認める。
再度中等少年院に戻して収容し、少年の自覚と少年をとりまく不健全な生活環境の調整をはかりたい。
よつて本件申請を相当と認め、戻し収容の期間を一年六ヵ月と定め、主文のとおり決定する。
(裁判官 佐々木一雄)
別紙
本人は昭和四〇年三月二五日印旛少年院を仮退院して頭書の小田原少年園に帰任し、以来昭和四二年二月一四日を仮退院期間終了日として横浜保護観察所の保護観察を受けているものであるが、右仮退院の許可に際し当委員会においては少年が著しい性格の偏倚を有し、中学在学中より父母に根強い反感を示して不良交友、家出外泊、喫煙、飲酒、映画、喫茶、女遊び等に耽り、この間非行を繰返して屡々当局の補導、又は処分を受け、殊に昭和三八年五月頃から暴力組織の○一家に入侵り、女給と同棲するなど極めて不健全な生活に陥つていたこと、父母の側にも相当調整を要する問題が残つていること等の事実に鑑み保護会たる頭書の小田原少年園を帰住地に選定の上、犯罪者予防更生法第三一条第三項による特別の遵守事項(以下単に特別遵守事項という)として
(3) 必ず非行集団との関係を断ち、酒やタバコを戒め、決して家出をしないこと
(4) 更生保護会主幹の指導に従うこと
外三項を定め、本人は右事項並びに犯罪者予防更生法第三四条第二項に定める遵守事項(以下単に法定遵守事項という)を夫々遵守するよう誓約したにもかかわらず保護観察を行う者の前示同趣旨に基く指導に反して
第一、仮退院の翌日頃から前示小田原少年園の主幹たる担当保護司鶴岡和修の指示により小田原市内のソバ屋○○に店員として住込就職したがその後一ヵ月も経たない昭和四〇年四月二三日頃保護観察を行う者の許可を求めないで、曾て関係のあつた前示○一家の者に誘われるまま右○○方を無断家出し、以来所在を明らかにしないで居住すべき右○○方、又は前示小田原少年園に居住せず、同時に故なく職場を放棄してその後正業に従事せず
第二、前項のように家出した後、曾て関係のあつた東京都北区○○町○ノ○○○△△荘内、前○茂の許に赴き、同人が暴力組織たる○一家に属し、不良徒輩を集めて賭博、景品買等いかがわしい生活をしていることを知りながら、同年六月九日本件により引致されるまで同人の許において使い走りに従事して生活を共にしていた
ものである。
右事案は関係書類により明らかであつて右第一の事実は法定遵守事項(1)(4)及び特別遵守事項(3)(4)に、第二の事実は法定遵守事項(2)(3)及び特別遵守事項(3)、(4)に夫々違背するものである。
次に仮退院以来の本人の行状を総合検討するところ、帰住途中の列車内において早くも母(継母)に対して露骨に反抗の態度を示し、家族との感情調整が容易でないことを思わせるものがあり、就職後いくばくもなく禁を犯して再び元の暴力組織に身を投じ、その生活については、本人は明確に語ろうとしないが、単にパチンコ等で徒遊したに止まらず、相当反社会的な行動があつたものと見なくてはならない。
このような行状は少年院送致前と何等選ぶところがなく、保護観察の方法によつては指導困難であり、このまま保護観察を継続しても犯罪に陥る虞は濃厚である。
よつて本人を少年院に戻して再教育を施す必要があるのでこの申請をする。
なお戻し収容の期間は少年の特質及び家庭環境を考慮して三年を相当と思料する。